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印鑑届出書とは
印鑑届出書とは、会社の実印を法務局に届け出る際に使用する書類です。
代表者が一人の場合は、その代表者の印鑑を提出しますが、
2名以上の代表者がいる場合は、そのうちの一人が提出します。
それぞれが提出しても構いませんが、同じ印鑑は使えないので、別々の印鑑を用意し、一人一枚づつ届出書を作成する必要がございます。
この印鑑届出書は一度出したら終わりというわけではなく、記載した内容に変更があれば再度提出が必要です。必要な場面については後ほどご説明いたします。
印鑑届出書と印鑑証明書の違い
似た言葉に「印鑑証明書」がございますが、印鑑届出書との違いについてご存じでしょうか。
印鑑届出書は、印鑑登録をする際に提出が必要な書類です。
それに対し、印鑑証明書は会社の代表印が、法務局に実印としてきちんと登録されていることを証明するための書類です。
会社として重要な書類を提出する際は、会社の実印とともにこの「印鑑証明書」の提出が求められます。
「印鑑証明書」は、印鑑登録が完了することで発行できますが、発行するには、「印鑑カード」というものが必要です。印鑑証明書の交付申請をする際、印鑑カードに割り当てられた番号を記入しますので、カードはなくさないように注意してください。
急に印鑑証明書の提出を求められて慌てないためにも、印鑑登録をしたついでにこのカードの交付も済ませるとよいでしょう。
以下、印鑑届出書の提出から印鑑証明書を発行するまでの大まかな流れになりますのでご参考ください。
①「印鑑届出書」に必要事項を記入後、法務局へ提出
②印鑑登録の手続き完了後、印鑑カード交付申請書を提出
③印鑑カード取得後、印鑑証明書交付申請書に必要事項を記入し、カードと一緒に提出。
④印鑑証明書の取得
会社・法人で使用される印鑑の種類
繰り返しになりますが、印鑑届出書にて申請する印鑑は会社の実印となります。
では、会社の実印とは一体どのようなものなのでしょうか。また、会社・法人で使用される印鑑は他にどんな種類があるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
■実印
法務局に届出をし、印鑑登録されたものです。
代表者が会社の代表として対外的に意思を示す印鑑となりますので、代表者印(代表印)ともよばれます。
主に官公庁への書類や公に提出する書類など、会社にとって重要な書類に使われます。形は丸く、外側の円には会社名、内側の円には役職名が刻印されます。
■銀行印
金融機関へ届出をし、印鑑登録されたものです。
主に法人口座を解説したり、会社のお金を運用する際に使われる印鑑です。形は実印とよく似た丸い形をしております。
■社印
四角い形をしており、別名「角印」とも呼ばれます。会社の認印であり、主に、会社の請求書や見積書などの日常的な業務で使われます。
■認印
実印と違って印鑑登録の必要がなく、荷物の受け取りや社内文書など、社内の日常的な業務に使われる印鑑です。いわゆるシャチハタも使えますが、場合によっては認印としての使用を断られるシーンもございますので注意が必要です。
■ゴム印
印面がゴムでできている印鑑です。印面には会社名や住所、電話番号などが入っているものが一般的です。封筒の記入替わりや領収書などビジネス文書全般に見られます。
印鑑届出書の提出が必要なケース
前項では会社で使われる様々な印鑑についてご紹介してきました。
特に実印は、印鑑届出書の提出に欠くことのできない重要な印鑑でしたね。
では、印鑑届出書は一体どのような場面で必要になってくるのでしょうか。
よく見られるのが、会社を設立する際に、法人登記の手続きと一緒に印鑑届出書を提出するケースです。
また、会社の代表者が変わった際も、変更登記と一緒に印鑑届出書を再度提出します。
その他にも印鑑届出書が必要なケースがございますので、以下にて詳しく見ていきましょう。
会社が本店移転登記をする時
会社が本店を移転する場合、新しく登記申請をする必要がございますが、
移転する前と後で、管轄する法務局が異なる(管轄区域外)場合がございます。
その場合、新しく移転した先を管轄する法務局へ、改めて印鑑届出をしなければなりません。
一方、移転した先が、移転する前と近しい場所であり、管轄する法務局が同じ(管轄区域内)場合は、印鑑届出は必要ございません。
ただし、登記申請は必要ですので忘れないようにしましょう。登記後、印鑑証明書には移転後の情報が記載された内容に書き換えられます。
法務局は全国に多数存在し、それぞれ管轄する地域が割り振られております。したがって会社の本店所在地がどこにあるのかによって、管轄する法務局が異なるのです。
本店移転をする際は、管轄する法務局がどこなのか法務局のHPで調べてみましょう。
会社の解散による清算
会社が業績の不振などから解散する場合、解散登記を行い、選任された清算人が清算手続きをします。
この時、会社の代表者は代表取締役から清算人に変更になります。
したがって、代表者を清算人として再度印鑑届出書の提出が必要となります。
一般的には、これまで代表取締役が使っていた印鑑を、清算人として再度登録するものとしています。
解散手続きは慣れない言葉や対応が頻発しますので、専門家に助言を受けながら進める場合もございます。
印鑑届出書の提出に関する法令
さて、印鑑届出書が必要なケースについてご紹介しましたが、印鑑届出書に関して法的にはどのように義務付けられているのでしょうか。
商業登記法第20条第1項では、以下のように定められております。
|登記の申請書に押印すべき者は、あらかじめ、その印鑑を登記所に提出しなければならない。
つまり、会社が新しく法人を設立したり、移転させる等といった登記申請が必要な場合、会社の代表者はあらかじめ登記所に印鑑(実印)を届け出ることを義務づけております。
しかし、令和3年2月15日に商業登記法第20条が改定され、オンライン申請の場合は届出の提出が任意となりました。つまり、オンラインの場合に限り、印鑑登録をしなくても会社を設立できるようになったのです。ところが実際は、金融機関での融資を受ける等の重要な取引の際は印鑑証明書の提出が求められるケースがございます。
印鑑届出書を提出して印鑑登録をしていれば、いざという時にすばやく印鑑証明書の提出ができる為、届出はまだまだ欠かせない手続きとなっています。
印鑑届出書の記入方法
次は、印鑑届出書の実際の記入方法についてご説明いたします。
◆印鑑届出書(見本)
参照:法務局ホームページより
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001188212.pdf
記入内容は以下の通りです。
①届出印
会社の実印として代表印を押印してください。
②商号・名称
会社の正式名称を書いてください。
③本店・主たる事務所
会社の本店所在地を書いてください。
④印鑑提出者
・資格:役職を選びます。
・氏名:代表者の名前を記入します。
・生年月日:代表者の生年月日を記入します。
⑤会社法人等番号
会社法人等番号を記載します。 ※不明の場合は空欄でも可
⑥印鑑カードの引継ぎ
・印鑑カードは引き継がない:新たに印鑑カードを発行する際に選びます。
・印鑑カードを引き継ぐ:今まで使っていた印鑑カードを今後も使用する際に選びます。その際、カード番号と前任者の記入を忘れないで下さい。
⑦届出人
・印鑑提出者本人の場合:本人の住所、氏名を記入し、個人の実印を押します。
・代理人の場合:代理人の住所、氏名を記入します。押印は不要です。
⑧委任状
代理人を立てる場合は、委任者が「代理人の住所・氏名」と「委任者本人の住所・氏名」を記入してください。
最後に、委任者個人の実印を押します。
※個人の実印は、本人の市区町村に登録済みの印鑑を用います。その際、「印鑑証明書」が必要になりますので注意しましょう。
印鑑届出書に記入する際の注意点
最後に、印鑑届出書の記入の注意点についていくつかご紹介いたします。
届出印は鮮明に
届出印は左上の指定の欄に押します。
この時、届出印が擦れたりよれたり、不鮮明な状態であると受理できなくなってしまいますので、鮮明に押すようにしましょう。
届出印のサイズ
届出に使用する印鑑のサイズには規定がございます。「辺の長さが1cmを超え、3cmいないの正方形の中に収まるもの」である必要がございます。
辺の長さと規定されますが、丸い印鑑では直径で算出します。
印鑑証明書の援用のチェック
会社の設立登記をする際の登記申請書に添付した印鑑証明書により、印鑑届出書への添付として兼用が可能です。
印鑑届出書の中段あたり、委任状について記載する項目の下に「市区町村作成の印鑑証明書は、登記申請書のものを援用する」と1行記載がございます。
こちらにチェックを入れるチェックボックスがございますので、登記申請書に添付した印鑑証明書を兼ねるのであれば、レ点を入れましょう。
代表者本人による提出の場合
印鑑届出書を代表者本人が届け出する場合と、代理人が提出する場合があるかと思います。
代表者本人が提出する際には、「届出人」の箇所は印鑑提出者本人にチェックを入れて、代表者個人の実印(市区町村に登録済の印鑑)を押します。個人の実印の印鑑登録証明書を添付する際は、発行から3カ月以内のものを使用します。
代理人提出の場合
代理人が印鑑届出書を届け出る場合は、「届出人」の箇所では、代理人にチェックを入れ、代理人の住所と氏名を記載します。
また、「委任状」の欄には住所と氏名を記載する欄が2箇所ございます。
こちらは、委任者が上段の部分に「代理人の住所と氏名」、下段に「委任者の住所と氏名」を記載し、委任者の実印(市区町村に登録済の個人の実印)を押します。
代理人が届け出る場合も少なくないのですが、記載する項目に何を記載すべきかがわかりにくい部分もございます。
法務局のホームページに記入例がございますので、確認しながら間違えのないように記載するようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。印鑑届出書を作成する際の参考にしていただければ幸いです。
会社設立の際には必ず作成が必要となりますが、作成する頻度が多いわけではなく、実際に作成する場面では注すべきポイントを抑えるのも大変だったりします。
会社に関する印鑑のルールやマナーは様々です。このコラムでも度々、会社の印鑑に関するテーマをお送りしております。合わせてご参考にしてみてください。
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