目次
開業届とは
まず開業届とはどのような書類なのかについて見てみましょう。
開業届とは、個人で新しく事業を始めた旨を届出する書類です。開業届を税務署に提出することにより個人事業主となることができます。
正式な名称は、「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、事業を開始した日から原則として1カ月以内に最寄りの税務署へ提出する書類でございます。
なお、「個人事業の開業・廃業届出書」に加えて、個人事業の開業届には、都道府県の税務署へ提出する必要書類である「個人事業税の事業開始等申告書」がございます。
この2種類の書類について、それぞれ記載内容やその書き方、提出先や郵送による方法、提出期限などをまとめておきます。
個人事業の開業・廃業等届出書
一般的に開業届と言われているのは、税務署へ提出を行う「個人事業の開業・廃業等届出書」です。こちらは、事業を開始した開業日から1カ月以内に管轄の税務署に提出する書類です。開業日は、個人事業主にとってはあいまいな場合もあるかもしれません。本人により開業したと考えられる相当な日付を開業日として提出はできますので、開業日から1カ月以内といっても厳密に日付がルールづけられているわけでもございません。
提出しないことによる罰則などがあるわけではございませんが、青色申告で確定申告をする場合に青色申告承認申請書を合わせて提出する必要がございます。
青色申告により税金を優遇できるメリットなどもございますので、その目的のために提出を行っている事業主の方が多いです。
開業届の書類は、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。また、最寄りの税務署で直接入手することも可能です。
対象となる方の定義は、新たに事業所得、不動産所得または山林所得を得る事業を開始した方で、税務署へ直接持参するか、郵送やオンラインで提出を行います。
開業届を税務署へ提出することにより、個人事業主として所得税を納めるという旨を税務署へ知らせることができ、税務署側としても、確定申告の際に必要な書類を事業主へ通知したり、事業主の申告や納税を管理することができます。
(外部:参考資料)
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
個人事業税の事業開始等申告書
都道府県税事務所宛に個人の事業を開始したことを申告する為の書類が「個人事業税の事業開始等申告書」です。こちらの書類は都道府県宛となりますので、それぞれの各都道府県により提出先や提出の期限に違いがございます。詳しくは管轄の都道府県税事務所でご確認ください。
こちらも、「個人事業の開業・廃業等届出書」と同じく、届出をしなかったとしても罰則があるわけではございません。
また、「個人事業の開業・廃業等届出書」も「個人事業税の事業開始等申告書」も事業を開始したことを知らせる書類で同じような役割がございます。
2つの書類の大きな違いとしましては、個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)が国税の所得税に関しての書類となり、個人事業税の事業開始等申告書は地方税の個人事業税に関する書類という点です。
税金には、課税主体が国となる「国税」と、地方公共団体が課税主体となる「地方税」がございますが、国税を管理しているのが税務署であり、地方税を管理しているのは都道府県税事務所となります。その為、同じような書類ではございますが、その税金の対象が異なり、提出先が異なって参ります。
地方税には個人事業税の他に、固定資産税や自動車税などがございます。事業で言えば、固定資産税として一定額以上の償却資産を償却資産申告書で申告する際などで地方税とは関わることとなります。
青色申告(青色申告承認申請書の提出)とは
開業届を提出する理由として、青色申告事業者として税金を優遇したいという点もございます。青色申告を行わない個人事業主は白色申告事業者となります。個人事業主は、所得税の申告にあたってこの「青色申告」と「白色申告」の2つの制度から選択することができます。
青色申告として確定申告をする場合には、開業届と合わせて、青色申告承認申請書の提出が必須となりますので、所得税の青色申告承認申請書についてもご紹介いたします。
青色申告事業者となるには、新規開業であれば開業日から2カ月以内に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署へ提出します。青色申告承認申請書は税務署で直接書類を受け取るか、国税庁のホームページからダウンロードすることで入手することができます。
提出にあたっては開業届と一緒に提出するのも便利です。
書類で記入するのは、納税を行う税務署名と提出日、納税地や事業主の情報などとなります。
青色申告事業者の場合は帳簿作成等が厳格になって参ります。帳簿の管理や領収書や請求書の保管についての対応や準備も忘れずに進めておくと便利です。
事業としてお金の管理を行うための出納帳により、お金の流れを正しく把握することができます。出納帳の書き方など、以下のコラムでもご紹介しております。合わせてご参照ください。
【税務署に提出】開業手続きの流れ
それでは実際に税務署へ開業手続きを行う流れについて解説いたします。
開業届の用紙を入手する
開業届の用紙は、税務署で直接入手する方法と国税庁のホームページからダウンロードする方法がございます。青色申告も行う場合には、青色申告承認申請書も合わせてダウンロードするようにしましょう。パソコンで入力して行うことも可能です。
必要事項を記入する
開業届の用紙を入手しましたら、必要事項を記入していきます。
なお、具体的な項目ごとの記入方法につきましては後ほど詳しくご案内いたします。
職業や事業の内容であったり、従業員の状況について予め整理しまとめておくと良いでしょう。
屋号については悩まれる方も多いかもしれません。会社でいえば社名となります。ご自身の名前を入れたりされる方もいらっしゃります。必須項目ではございませんが、開業における自身の想いを込めたわかりやすい屋号を記入すると良いでしょう。
職業については、個人事業税の算出の根拠とされますので正しく記載するようにしましょう。年率5%の設定がほとんどとなりますが、職業によっては4%であったり3%であったりと、職業名によって異なって参ります。
税務署へ提出する
開業届を税務署へ提出する際には、印鑑・個人番号がわかるもの・本人確認書類を用意します。本人確認書類は運転免許証やパスポートなどを用意します。
その他、青色申告を行うのであれば「青色申告承認申請書」であったり必要に応じて給与支払事業所開設届出書や源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書などを合わせて提出します。
給与支払事業所開設・移転・廃止届出書は、家族や従業員へ給与を支払う手続きを真正する書類です。
そして源泉所得税の納税の特例の承認に関する申請書では、原則毎月支払うことになる源泉所得税を、年に2回、まとめて納付することができる手続きのための書類です。毎月、源泉所得税を支払うのは面倒となりますので、ぜひ提出しておくと良いでしょう。
青色申告をする場合で、家族に支払う給与を経費にするための手続きには「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」を合わせて提出します。青色申告をして家族に給与を支払う場合は開業届と合わせて必ず提出しておきましょう。
控えに受付印をもらう
開業届の控えに受領印をもらっておくのも忘れないようにしましょう。
窓口の提出であれば、受付印を押した後に返却されます。受付印のある開業届の控えは大事な書類です。受け取って大切に保管しておくようにしましょう。
【郵送】開業手続きの流れ
開業届は税務署へ行かずとも行うことができます。
税務署へ行かない方法の一つが郵送で出す方法でございます。郵送であれば、必要書類を封筒に入れてポストへ投函するだけですので手間がかからないメリットがございます。
郵送する宛先は、納税地を管轄する税務署宛となります。原則としては個人事業主の場合であれば自宅の住所となります。
必要な書類としては「開業届」「開業届の控え」「返信用封筒と返信用の切手」「マイナンバー確認書類及び本人確認書類」「青色申告申請書」などです。
開業届については後ほどの開業届の記入方法として詳しくご紹介いたします。
開業届の控えは、届出書(控用)か開業届のコピーでも構いません。同封しておけば、税務署の受領印が押された控えを返送いただけますので用意しましょう。開業届の控えは、屋号名義での銀行口座の解説の際などに必要となる書類です。開業届をする際に用意するのと、手続きを終えて控えを受領したら大切に保管するようにしましょう。
返信用の封筒には自分の住所を記載し予め返信用の切手を貼り付けておきます。
マイナンバーカードを持っている方はマイナンバーカードの写しを用意します。
そして、開業届と合わせて青色申告承認申請を行う場合には、所得税の青色申告承認申請書とその控えも準備します。
さて、必要な書類を用意し封筒に入れたら郵送するだけとなります。しかし、ここで注意する点がございます。郵送する書類の中には、本人確認書類などの個人情報としても重要な書類が含まれます。簡易書留やレターパックなど追跡可能な方法で送るようにしましょう。郵便物が間違いなく税務署へと届いたのかを追跡し確認する事ができます。
あるいは、手間はかかりますが、税務署にある時間外収受箱へ直接提出する事も可能です。税務署へ持参する手間はありますが、税務署宛の切手は不要となります。
【オンライン】開業手続きの流れ
準備するものなどに少し手間暇が必要となりますが、オンラインで開業届を出す方法もございます。
国税電子申告・納税システムである「e-Tax」を利用する方法です。こちらは確定申告などでも利用する事ができるシステムとなります。
ご利用にあたっては、始めに「利用者識別番号」というIDを取得します。
利用者識別番号は半角16桁の番号となり、e-Taxを利用するのに必要となる番号です。
e-Taxの利用者識別番号をマイナンバーカードを使って登録するには、パソコンであればマイナンバーカード、ICカードリーダライタ、マイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォンが必要となります。またスマートフォンからであれば、マイナンバーカードとスマートフォンが必要です。
開始届出書を作成・送信して行う方法もございます。e-Taxのホームページにてご確認ください。
利用者識別番号を取得したらパソコンでは、e-Taxソフトをインストールします。科目として「所得税」を追加し専用のソフトをダウンロードしましょう。
ソフトをインストールしたら開業届を作成していきます。
e-Taxソフトを立ち上げて、「申請・申告等一覧」の中から「個人事業の開業・廃業等届出書」を選択します。
そして画面上で必要事項を入力していきます。入力に必要な項目は次にご紹介しますの開業届の記入方法もご参照ください。
入力を終えたら、ICカードリーダライタをパソコンに接続し、マイナンバーカードをセットします。そして電子署名を付与して送信する流れとなります。青色申告もする場合であれば、同様の流れで、「所得税の青色申告承認申請書」へも入力し送信しましょう。
開業届を送信したら、e-Taxのメッセージボックスに受信通知が届きます。この通知が、税務署への送信完了の確認となります。
屋号名義での銀行口座の開設などで必要となる開業届の控えについて、e-Taxでの丁出では受け取ることができません。提出した際の送信データを印刷したものと、受信通知を印刷したものを合わせて提出することで、開業届の控えとして利用することができます。印刷して保存しておくと便利でしょう。
e-Taxでの提出においては、ソフトのインストールや事前のセットアップ、必要なものを揃えたりと手間はかかりますが、様々な申請や提出にも応用できるソフトにはなりますので、ご興味ございましたらe-Taxのホームページより内容をご確認のうえ利用していただければと思います。
開業届の記入方法
開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の必要事項の書き方について、項目別に順番に見てみましょう。
提出先及び提出日
開業届を提出する管轄となる税務署名と提出する日付を記入します。管轄となる税務署名は納税地を諸葛する税務署名を記入します。所轄の税務署について詳しく確認するには国税庁のホームページよりご確認いただけます。
納税地および住所
納税地は「住所地」「居所地」「事業所」から該当するものを選択します。実際に住んでいる住民票の場所が住所地となり一般的には住所地を選択します。居所地は住民票の住所ではない一時的に住んでいる場所を意味し、事業所は事務所や店舗などとして事業を行っている場所を意味します。
事業者の情報
事業者の「氏名」「生年月日」と12桁の「個人番号」を記入し押印をします。
職業・屋号
具体的な職業名と屋号を記入します。屋号は空欄のままでも届出可能です。屋号を記入するのであれば、お名前を入れても構いませんしご自身の想いで決めていただいて構いません。
職業は先述もしておりますが、個人事業税の算出の根拠となる項目となります。「物品販売業」「料理店業」「印刷業」「コンサルタント業」あるいは、士業関係でいえば、「弁護士業」「司法書士業」「行政書士業」「税理士業」など実態に合わせて正しく記載するようにしましょう。職業を偽って届出しますと、後々に税務調査などで指摘を受けたりトラブルになる場合もございますので注意しましょう。
届出の区分・所得の種類
開業届の場合、届出の区分は開業を選択し、所得の種類は事業所得を選択します。
事業所等を新設した日
こちらには開業日と同じ日付を記入します。開業日はご自身で開業したとする日付を自由に設定することができます。
届出書の提出の有無
青色申告承認申請書を同時に提出する場合、青色申告を示す上段にて「有」を選択します。その下の段は、消費税課税事業であるかの確認の有無となります。
事業の概要
簡潔な内容で事業の内容を記入します。例えば、システムメンテナンスの請負、プログラミングの受注、などと記入します。
給与などの支払の状況
青色事業専従者がいる場合は「専従者欄」、それ以外の従業員がいる場合は「使用人欄」に人数を記入するようにしましょう。従業員が一人もいないのであれば0人とし、記載事項は空欄で構いません。
開業届を提出するメリット
開業届を行うメリットは税金の優遇などが大きいですが、その他にもポイントがございます。
いくつか具体的な内容をご紹介いたします。
青色申告による税金の優遇
青色申告は、一定の要件を満たすことで税金面での優遇措置を受けることのできる制度であり、個人事業主であれば活用したい制度となります。
一般的には、開業届の提出と同時に青色申告承認申請書も提出することで、青色申告事業者となります。こちらの青色申告承認申請書を提出しなかった場合は、自動的に白色申告事業者となり、税金の優遇措置を受けることができなくなります。なるべく開業届と同時に提出するか、忘れてしまった場合は早めに提出するようにしましょう。
青色申告により青色申告特別控除として、最大65万円を所得から控除を受けることができたり、青色事業専従者給与を必要経費にできたりと優遇措置がございます。
社会的な信用が求められる手続き
開業届によって開業届(控用)を受領することができます。この開業届(控用)は、屋号名義の銀行口座を開設したり、銀行から融資を受ける際の書類として提出が求められる場合がございます。あるいは、オフィスの契約の審査においても提出が必要となる場合がございます。開業届は事業を行うにあたっての社会的な信用の書類として様々な場面で利用できますのでメリットのひとつと言えるでしょう。
職業の証明書類として
会社員であれば社員証や在職証明書によって職業を証明する書類とすることができます。
個人事業主やフリーランスの場合には、そのような証明書がございませんので、開業届の控えを、職業の証明書類として利用することも可能です。各種手続きの際に開業届の控えを求められることもございますので、大切に保管しておくようにしましょう。
開業届を提出する際の注意点
開業届を提出して個人事業主になる差異には注意すべき点がいくつかございます。
開業届の提出にあたっては以下も合わせてご確認ください。
失業手当を受け取れない
会社の雇用保険に加入していた人が失業した場合に受給できるのが失業手当です。開業届は、事業主として事業を開始したことになりますので、失業手当を受け取る要件である求職者や仕事を探している状態ではなくなります。開業しても売上がない場合もあるかもしれません。それでも失業手当の受給対象にはなりません。
失業手当を受給検討している方は、場合によっては、開業届を提出しない方が良いかもしれません。
副業をしている場合
会社に秘密で副業をしている場合で開業届を出す事により、副業が会社に知られてしまうのが心配、という声も聞くことがございます。
しかし、開業届で知られるのではなく、確定申告や住民税の変動によって知られるケースがほとんどです。副業の年間所得が20万円を超えた場合は確定申告が必要となります。会社に秘密にしていた副業が確定申告による知られトラブルになる場合もあるかと思います。
とはいえ、副業については、そもそも会社の規定含めて確認が必要でしょうし、前向きに受け取る会社もあるかと思いますので職場の人事や上司へ確認しておくのが良いでしょう。
配偶者の扶養に入っている場合
配偶者の扶養に入っている場合、健康保険料を支払う必要がありませんが、健康保険組合によっては、個人事業主になることで扶養に入れないとする場合がございます。健康保険組合のルールなどを事前に確認しておくのが良いでしょう。
扶養から外れた場合は、ご自身で保険料を納付する必要がございます。
選んだ職業による税率
先述の開業届の記入方法にて少し解説しておりましたが、職業の欄の記載内容によって、個人事業税の税率や課税対象が異なってきます。
事前に確認のうえ正しく職業欄を記入するようにしましょう。
まとめ
今回は個人事業主として事業を行う際の開業届についてご紹介いたしました。
個人事業主の方は、個人で事業を行う上での各種手続きを行っていく必要がございます。
書類に関してはできる限り電子化するなど、効率良い方法を構築しておくのが望ましいです。
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