目次
法人印鑑とは?
法人印鑑とは、企業や団体などの組織が組織を運営する際に、日々の業務で使用する印鑑のことです。
企業や団体が組織を運営していくには、日々様々な業務が行われていますね。
例えば、取引先との契約締結、請求書の発行、銀行口座の開設、その他社内事務作業などです。
こうした作業をする上で、押印は欠かせないものであり、書類や業務内容によって使用される印鑑が異なります。そこで、組織は書類や業務に合わせて複数の印鑑を作成しているのが一般的です。
法人印鑑の種類と用途は?
では、法人印鑑はどのような種類があるのでしょうか。
大きく分けて5種類あり、種類によって用途や形状が異なります。
それでは詳しく見ていきましょう。
代表者印(会社実印・法人実印)
まず一つ目が代表者印です。
代表者印とは、代表者が会社の代表として、会社の意思を対外的に表示する際に使われる印鑑のことです。通常、会社設立の際にはこの代表印を法務局に印鑑登録するため「会社実印」や「法人実印」などとも呼ばれます。
代表者印は、会社設立時に登録するハンコとして使用される他、不動産取引時、株券発行時など、会社として極めて重要な手続きの際に使われます。そのため、企業にとって最も重要な印鑑であるといってもよいでしょう。
したがって、社内通知や荷物の受け取りなど、いわゆる認印として使うシーンには代表者印は向きません。
形状は丸い形をしており、丸印とも呼ばれます。印影が二重の円に分かれており、外側には会社名、中央には役職名が刻まれているのが特徴です。
代表者印についての詳細は以下でもご紹介しております。代表者印を作成する時の具体的なポイントなどもご案内しておりますので宜しければぜひご参考ください。
(参考)コラム:代表者印とは?会社印との違いや作成・使い方のポイントを解説!
会社銀行印(法人銀行印・銀行印)
二つ目は会社銀行印です。
前述の代表者印が法務局に届け出るのに対し、会社銀行印は、銀行などの金融機関に届け出をし、登録します。
金融機関で法人の銀行口座を開設する際や、窓口で預金を引き出す時など、お金に関する重要な手続きの際に必要な印鑑です。
形状は代表者印と同じく丸形で、印影が二重の円に分かれており、外側には会社名、中央には「銀行之印」と刻まれています。
さて、ここで注意点です。
形が似ている代表者印と会社銀行印ですが、形が似ているからと言って兼用するのはやめましょう。なぜなら、兼用している印鑑を紛失したり盗難される可能性もあるからです。
代表者印と会社銀行印はそれぞれ別々の印鑑を用意し、別々の場所で保管してください。
会社角印(会社印、社印)
三つめは会社角印です。
別名「会社印」「社印」とも呼ばれます。
取引先に発行する自社の請求書や見積書であったり、社内用の通知書類など、日常業務に使われます。四角い形が特徴的で、印面には企業名が入ります。
法人印鑑の中でもひと際大きいことから、実印のようにも見えますが、実は会社の認印となります。したがって、代表者印のように法務局に届け出る必要はございません。
届け出る必要はなくても、会社角印は会社にとって大切な印鑑です。特に、請求書など取引先に向けた書類にも頻繁に使用しますので、紛失、盗難には気を付けましょう。
会社角印についての詳細は以下でもご紹介しておりますので、宜しければご参考ください。
(参考)コラム:社印とは?角印や社判との違いを解説
会社認印
四つ目は会社認印です。
会社認印は、法人実印のように届け出る必要はなく、書留や荷物の受け取り、重要度の低い社内文書の押印時など、より簡易的な業務に使用される印鑑です。
一般的に形は丸く、印面には社名や代表者名が入ります。
法人印鑑の中でも比較的重要度が低い場面で使われますので、会社の様々なシーンで見ることが多い身近なハンコです。
いわゆるシャチハタと呼ばれている「インク浸透印」で作成しても良いでしょう。
ゴム印(住所印)
最後はゴム印です。
ゴム印とは、会社名や住所、電話番号等が記載されたゴム製の印鑑のことです。
一般的には会社の封筒や領収書など、同じ記載内容のものを何枚も必要な場合に利用されます。
大量の書類に会社の住所や電話番号を表記しなければならない時、一つ一つ手書きでは手間と時間が掛かります。そんな時、予め必要な情報を記したゴム印を使えば作業効率が高まります。
ゴム印ですので、長年使うと経年劣化しやすい弱点はあるものの、業務効率化の観点からみると非常に便利ですので一度作成してみてはいかがでしょうか。
法人印鑑の登録方法は?
さて、前述しましたように法人印鑑には大きく分けて5種類ございました。
なかでも代表者印は、法務局に印鑑登録が必要な実印と呼ばれるものでした。
では、実際どのように登録すればよいのでしょうか。次は、具体的な登録方法についてご紹介いたします。
①印鑑届出書の提出
まずはじめに「印鑑届出書」に必要事項を記入して、会社の事業所本部を管轄している法務局へ提出します。
法務局は全国に多数存在し、それぞれ管轄する地域が割り振られております。したがって会社の所在地がどこにあるのかによって、管轄する法務局が異なります。
管轄する法務局については法務局のHPで調べることができますので参考にしてください。
参考)管轄のご案内:法務局
②印鑑カード交付申請書の提出
印鑑登録が完了したら、次は「印鑑カード」の取得手続きをしましょう。
「印鑑カード交付申請書」に必要事項を記入し、同じく管轄の法務局に提出してください。簡単に発行できますので印鑑登録のついでに印鑑カードの発行も終えましょう。
印鑑カードは、後々「印鑑証明書」の発行に必要となります。印鑑証明書とは会社として重要な書類を提出する際に、会社の実印とともに提出が求められる書類です。印鑑カードがないと発行できませんので、保管には十分注意してください。
以上で登録は完了です。
ここまでをまとめると以下のようになります。
①「印鑑届出書」に必要事項を記入後、法務局へ提出
②登録完了後、「印鑑カード交付申請書」に必要事項を記入し、法務局へ提出
③印鑑カードを取得
オンライン申請の場合は?
通常、会社を設立する際は法務局の窓口にて法人登記を行い、同時に印鑑登録を済ませますが、オンラインでも行うことができ、その場合の印鑑登録の届出は任意となります。
理由としては、令和3年2月15日に商業登記法第20条が改定されたためです。
ところが実際、金融機関での融資を受ける等の重要な取引の際は印鑑証明書の提出が求められるケースがございます。繰り返しになりますが、印鑑証明書は、印鑑登録をして印鑑カードを所持していないと発行できません。
よって、いざという時に印鑑証明書の提出ができるようにしておくためにも、任意といえども届出は済ませておくことをお勧めします。
印鑑の使い方は?
法人印鑑の種類、登録方法について抑えたところで、次は実際の使い方についてご紹介します。
法人印鑑には様々な種類の使い方があり、それぞれ意味も押す位置も全く異なります。
ここでは5つの使い方についてご紹介させていただきます。
押印
押印(おういん)とは、署名以外の方法で記載された名に対して印を押すことです。もともと「記名押印」という言葉を省略したものになりますので、記名とセットで扱われます。
記名とは署名以外の方法で記載することで、例えば、ゴム印で押された氏名や、印刷による氏名、他人が代筆した氏名が該当します。
押印についての詳細は以下でもご紹介しておりますので、宜しければご参考ください。
(参考)コラム:押印とは?捺印との意味の違いや法的効力について解説!
割印
割印(わりいん)とは、2部以上の契約書における同一性や関連性について証明するために押す印です。改ざんを防ぐために使われます。
押し方としましては、契約する複数の契約書を少しずらして重なった部分にそれぞれかかるように押します。印鑑が二つに割れるという事から「割印」と呼びます。
使用する印鑑は署名や記名に使用したものと必ずしも同じ必要はないとされており、契約者が複数の場合は関係者全員が押します。
割印についての詳細は以下でもご紹介しておりますので、宜しければご参考ください。
(参考)コラム:契約書の割印とは?押し方のルールや意味についても解説!
契印
契印(けいいん)とは、契約書が複数にわたる時に、それらのページが連続していることを示すために押す印です。別名ちぎりいんとも呼ばれ、ページの抜き取りや差し替えを防ぐために使われます。
押し方としましては、各ページの見開き部分にまたぐように押します。
使用する印鑑は署名や記名に使用したものと同じものを使い、契約者が複数の場合は関係者全員が押します。
契印についての詳細は以下でもご紹介しておりますので、宜しければご参考ください。
(参考)コラム:契印の押し方や意味とは?割印との違いも解説!
捨印
捨印(すていん)とは、訂正箇所が必要な場合に備えて、あらかじめ文書の空欄に押しておく印です。捨印があることで、その文書に訂正があった際は、本人以外の契約相手方や代理人でも訂正できるようになります。
捨印を使って訂正する場合は、誤った文字を二重線で消し、近くに正しい文字を書いた後、捨印の近くに削除・追加した文字数を記入します。(例:✕文字削除△文字追加) ※「追加」の他、「加入」または「加筆」と書いても構いません。
捨印の便利なところは、訂正したい文書が自分の手元を離れて相手方にわたっている場合、いちいち本人が出向いて訂正しなくても済むことです。しかし、場合によっては意図しない箇所を勝手に訂正される可能性もございます。
捨印は、弁護士などの信頼できる相手を前提とし、誤字脱字程度の修正に限り使用するのが基本ですので、安易に使用するのは避けてください。
消印
消印(けしいん)とは、文書に貼った切手や収入印紙が使用済みということ表すために押す印です。切手や印紙の再利用を防ぐ為に使われます。
使用したことが分かるように、文書と収入印紙を跨ぐように押します。
印は、契約で使った印鑑とは別のものをつかっても構いませんし、印鑑が手元にない場合はボールペンで署名するでもよいでしょう。ただし、簡単に消せてしまうシャープペンシルや鉛筆での署名は無効となるので避けましょう。
なお、収入印紙自体、国へ印紙税を納付する手段となりますが、課税文書へ収入印紙を貼り付けし消印を押すことで納税が成立いたします。消印を押していない場合は過怠税が徴収されますので、収入印紙の消印は忘れずに押してください。
収入印紙の消印については以下でもご紹介しておりますので、宜しければご参考ください。
(参考)コラム:収入印紙の割印とは?間違いやすい部分や注意点を紹介
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
今回は法人印鑑をテーマに、その種類や用途の違いを中心に解説いたしました。
法人印鑑は主に5種類あり、代表者印、会社銀行印、会社角印、会社認印、ゴム印がございます。なかでも代表者印は会社実印として存在し、法務局にて印鑑登録の手続きを行う必要がございます。印鑑届出書に必要事項を記入し、印鑑カードを取得すれば手続きは完了です。
印鑑カードは、後々印鑑証明書を発行する際に必要になりますのでなくさないようにしましょう。
また、様々な使い方があり、主に、押印、割印、契印、捨印、消印と呼ばれるものが存在します。それぞれの役割を整理し、状況に応じて正しく使えるようにしましょう。
特に消印の部分では、収入印紙の消印を忘れてしまうケースがございます。消印を忘れると後々手間になりますので、忘れないように注意して下さい。
法人印鑑については以下でもご紹介しておりますので、合わせてご覧ください。
(参考)コラム:契約書の印鑑は実印?種類から押し方までを解説